プロセス追跡スコープ

UiPath.Core.Activities.ProcessTracking.ProcessTrackingScope

説明

[プロセス追跡スコープ] は、ワークフロー内のタスクを詳細に追跡できる、UiPath のシステム アクティビティです。

[プロセス追跡スコープ] アクティビティを使用すると、UiPath Process Mining で特定の業務シーケンスを追跡できます。RPA 開発者は、これらのシーケンスを [プロセス追跡スコープ] アクティビティ内にラップすることにより、シーケンスをタスクとしてマークできます。

トレースとタスク

タスクは、プロセス内の作業またはアクティビティの特定の単位に相当します。タスクは、ワークフロー内の [プロセス追跡スコープ] アクティビティによって作成されます。タスクには、開始タイムスタンプ (スコープの開始時) と終了タイムスタンプ (スコープの終了時) があります。タスクを入れ子にして親子関係を作成できます。

トレースとは、1 つのプロセス、または関連する一連のタスクの実行全体を表す上位レベルの概念です。トレースによって、同じプロセス実行に属する複数のタスクをグループ化して整理します。トレースには専用の一意の識別子 (トレース ID) があり、さまざまなタスクがより大きなプロセス内でどのように関連しているかを表すコンテキストを提供します。

UiPath Studio のインターフェイスでは、[プロセス追跡スコープ] アクティビティの [追跡方法] プロパティを使用して、タスクとトレースの関係を制御できます。

[追跡方法] オプション	トレースの管理	タスクの管理	備考	例
現在のトレース内	新しいトレースを作成することなく、既存のトレースが続行されます。 トレースは、[プロセス追跡スコープ] の完了後も開いたままです。 複数のステップを含む長期実行プロセスに便利です。	スコープの開始時に新しいタスクが作成されます。 スコープの完了時に、タスクは自動的に閉じられます。 タスクの開始時刻と終了時刻は、既存のトレース内に記録されます。	進行中の単一のプロセスの一部である順次操作を同じプロセス コンテキスト内で追跡する場合に便利です。 以下に示す一部のアクティビティでは、トレース コンテキストが変更される可能性があります。 [トランザクション アイテムを取得]/[トランザクション アイテムを追加] の後の [トランザクションのステータスを設定] [トランザクション アイテムを取得]/[トランザクション アイテムを追加] の後の [トランザクション アイテムを延期] キュー アイテム完了まで待機し再開 [ジョブを開始] または [ジョブを開始し参照を取得] ジョブ完了まで待機し再開	ある e コマース企業に、顧客の注文を処理するワークフローがあります。 メインのトレースは、注文を受領したときに開始されます。 異なるステージ (注文の検証、支払処理、出荷手配) に対して複数の [プロセス追跡スコープ] を使用します。 これらのすべてのスコープでは、[現在のトレース内] オプションを使用して、すべてのタスクを同じ受注処理トレース内に保持します。 これにより、注文のフルフィルメント プロセス全体を包括的に把握できます。
新しいトレース内	スコープの開始時に、一意のトレース ID を持つ新しいトレースが作成されます。 このスコープの前に以前のトレースのコンテキストが存在していた場合、トレースのコンテキストはそのトレースのコンテキストに戻ります。 新しいトレースのプロセス名を指定する必要があります。この名前を使用して新しいトレースをグループ化し、Process Mining 内のさまざまなプロセスを整理および分類できるようにします。	スコープの開始時に新しいタスクが作成されます。 スコープの完了時に、タスクは自動的に閉じられます。 タスクの開始時刻と終了時刻は、既存のトレース内に記録されます。	オートメーション内の新しい個別のプロセスまたはサブプロセスの追跡を開始しながら、必要に応じていつでも前のトレース コンテキストに戻ることができるようにする場合に便利です。	サポート チームがオートメーションを使用して顧客のチケットを処理します。 メイン ワークフローでチケットを受け取って分類します。 チケットごとに新しい [プロセス追跡スコープ] が作成され、[新しいトレース内] オプションが設定されます。 これにより、顧客の問題それぞれに対して別個のトレースが作成され、各チケットがどのように処理されるかを個別に追跡および分析できます。 応答時間や解決率を測定したり、特定の種類の問題を処理する際のボトルネックを特定したりするのに役立ちます。
既存のトレース内	新しいトレースを作成するのではなく、以前に作成されたトレースに接続します。 トレースのコンテキストは、ワークフローの構造によって変わる場合があります。 通常は、オブジェクトのプロパティ ([オブジェクト ID]、[オブジェクトの種類]、[オブジェクトのインタラクション]) とプロセス名で既存のトレースを識別する必要があります。	新たに作成されたタスクが既存のトレースに追加され、異なるオートメーション間でプロセスの継続性が維持されます。 スコープの終了時に、タスクは既存のトレース内で閉じられます。	このオプションは、複数のオートメーションで同じ業務アイテムやオブジェクトを処理する場合に便利です。ただし、これらのオートメーションは、キューやジョブなどの UiPath コンポーネントを介して直接接続されているわけではありません。このオプションを使用することで、個別に実行される異なるオートメーションを通じた業務アイテムのジャーニーの継続的なトレースを維持できます。	ある大企業に、複数の部門が関わる複雑な請求書処理システムがあります。 最初のトレースは、請求書が財務部門で受領されたときに作成されます。 請求書はさまざまな部署 (検証、承認、支払いなど) を移動するため、別個のオートメーションで各ステップを処理します。 各部署のオートメーションで、[既存のトレース内] オプションを指定して [プロセス追跡スコープ] を使用します。 請求書番号をオブジェクト ID として使用して、既存のトレースを識別します。 これにより、請求書が別個の複数のオートメーションで処理される場合でも、異なるシステムや部署にまたがる請求書ジャーニーを完全にトレースできます。

注:

• タスクの作成は常に、[プロセス追跡スコープ] の開始時に行われます。

• タスクを閉じる処理は、トレース オプションに関係なく、常にスコープの完了時に行われます。

• タスクの既定のステータスは、明示的に変更されるか例外が発生しない限り、[成功] です。

• プロセス全体を完了としてマークする場合は、[トレースのステータスを設定] アクティビティを使用してトレースを明示的に閉じる必要があります。

オブジェクト

プロセス追跡サービスのコンテキストでは、オブジェクトとは、外部システムで処理される業務アイテムを指します。この方法により、重要なアイテムにタグを付け、自動化されたプロセスのさまざまな部分でそのアイテムを追跡します。オブジェクトは、同じ業務アイテムを操作する異なるオートメーションを接続するのに役立ちます。

たとえば、JIRA チケットはこのようなオブジェクトと見なすことができます。

JIRA チケットを作成するオートメーション (A1) がある場合、[オブジェクトを追跡] アクティビティを使用して、チケットの詳細を次のように定義します。

• オブジェクト ID - JIRA 識別子 (例: "DOC-1234")。

• オブジェクトの種類 - "JIRA ticket"

• オブジェクトのインタラクション - オートメーションが JIRA チケットとどのように対話するかを示します。この場合、オートメーションがチケットを作成したため、インタラクションは [作成済み] になります。

• オブジェクトのプロパティ - JIRA チケットのプロパティです。次の形式です。

  {
    "XUiPathConnectorKey": "<XUiPathConnectorKey>",  // for example, "uipath-jira"
    "XUiPathConnectorName": "<XUiPathConnectorName>",  // for example, "JIRA"
    "XUiPathObjectDisplayName": "<XUiPathObjectDisplayName>",  // for example, "Issue"
    "XUiPathObjectName": "<XUiPathObjectName>"  // for example, "curated_issue"
  }

重要:

オートメーション A1 によって作成されたオブジェクトと同じオブジェクトを別のオートメーション (A2) で操作する必要がある場合は、オートメーション A2 に対して [プロセスの追跡] を有効化し、[既存のトレース内] オプションを選択します。同じオブジェクトの詳細を指定してオートメーション間の接続を維持し、オートメーション A2 がオートメーション A1 によって作成されたチケットを見つけて処理できるようにします。

オブジェクトを追跡することで、自動化されたプロセスを通じた特定の業務アイテムのジャーニーを辿ることができ、プロセスを最適化・分析するための貴重な洞察が得られます。

機能

ワークフローに [プロセス追跡スコープ] を追加します。

• スコープの開始時にタスクを開始します (開始タイムスタンプ)。

• スコープの終了時にトレースを終了します (終了タイムスタンプ)。

• 入れ子になった [プロセス追跡スコープ] をサポートします。

• プロセス追跡サービスの内部のスコープによって子タスクが生成され、階層プロセス マイニングのプロセス グラフ内に表示される親子関係が維持されます。

• 暗黙的および明示的なタスクのステータスを処理します。

  • 暗黙的なタスクのステータス

    • 既定のステータスは [成功] です。

    • キャッチされない例外が発生した場合は、自動的に [失敗] に設定されます。

    • 例外の詳細は Process Optimization アプリで確認できます。

  • 明示的なタスクのステータス

    • タスクの終了方法を指定するには、[タスクのステータスを設定] アクティビティを使用します。

    • 指定できる値は、[成功]、[失敗]、[キャンセル済み] です。

• 明示的なトレースのステータスを処理します。

  • トレースの終了方法を指定するには、[トレースのステータスを設定] アクティビティを使用します。

    指定できる値は、[成功]、[失敗] です。

• [追跡方法] プロパティでは、タスクの追跡の動作を次の 3 つの中から選択できます。

  • 現在のトレース内 (既定の動作)

    • 新しいタスクを現在のトレース内で追跡します。

    • 現在のスコープによって生成されたトレースの ID を使用します。

  • 新しいトレース内

    • トレースの新しい ID を生成します。

    • タスクを新しいトレースで追跡します。

    • グループ化するためのプロセス名を指定する必要があります。

    • スコープの終了後、前のトレースのコンテキストに戻ります。

  • 既存のトレース内

    • タスクを既存のトレースに追加します。

    • 別個のオートメーション プロセスをリンクする場合に便利です。

    • オブジェクトの詳細とプロセス名でトレースを識別する必要があります。

既存のオートメーションに対して [プロセスの追跡] を有効化する

シーケンスに対して [プロセスの追跡] を有効化するには、以下の手順を実行します。

1. ワークフロー内のシーケンスを選択します。

2. [プロパティ] パネルで、[プロセスの追跡] チェックボックスをオンにします。

[プロセスの追跡] をアクティブ化すると、シーケンスは自動的に [プロセス追跡スコープ] アクティビティで囲まれます。

プロジェクトの対応 OS

Windows | クロスプラットフォーム

Windows、クロスプラットフォームでの設定

プロセスの追跡

任意です。選択すると、スコープ内のシーケンスに対してプロセスの追跡が有効化されます。

タスク名

任意です。このスコープによって作成されるタスクの名前を指定できます。既定では、含まれるシーケンスの名前が使用されます。

追跡方法

必須です。タスクをトレースに関連付ける方法を決定します。次のオプションを使用できます。

現在のトレース内

既定のオプションです。[プロセス追跡スコープ] アクティビティによって作成されたタスクを既存のトレースに追加します。同じプロセスのコンテキスト内で追跡を続行する場合に便利です。このスコープによって作成されたタスクはスコープの完了時に閉じられますが、既存のトレースは開いたままで続行されます。このオプションは、進行中の単一のプロセスの一部である順次操作に推奨します。

新しいトレース内

このタスクと、スコープ内のすべてのサブタスク専用の新しいトレースを作成します。新しい別個のプロセスやサブプロセスを開始する場合に便利です。新しいトレースには、専用の一意のトレース ID が付きます。スコープが完了すると、新しいトレースのコンテキストは前のトレースのコンテキストに戻ります。関連付けられたタスクは閉じられ、追跡されたアクティビティは終了とマークされます。このオプションを選択すると、[プロセス名] フィールドが表示されます。

• プロセス名 - 新しいトレースで開始するプロセスを指定します。

既存のトレース内

タスクを既存のトレースに追加します。オートメーションの、連続していないさまざまな部分を [オブジェクトを追跡] アクティビティで接続する場合に便利です。オブジェクトの詳細とプロセス名でトレースを識別する必要があります。指定した既存のトレース内に作成されたタスクはスコープの完了時に閉じられますが、既存のトレースは開いたままで続行されます。このオプションを選択すると、トレースの識別に使用する以下のフィールドが表示されます。

• プロセス名 - 既存のトレース内で開始するプロセスを指定します。

• オブジェクト ID - 現在のタスクに関連付けられたオブジェクト ID を指定します。これを使用すると、タスクの一部としてオブジェクトを追跡できます。この情報は、別のオートメーションでトレースを継続する際にも役立ちます。

• オブジェクトの種類 - 切り替え先のトレース ID を識別するためのオブジェクトの種類を指定します。

• オブジェクトのインタラクション - タスクがオブジェクトと対話する方法を選択します。

重要: タスクはそのスコープが完了すると自動的に閉じられますが、プロセス全体を完了としてマークする場合は、[トレースのステータスを設定] アクティビティを使用してトレースを明示的に閉じなければならないことがあります。